Web、アプリ事業企画・計画の作り方5 ー 事業シミュレーションを作成してみよう

2022年10月12日

実際に事業企画・計画を作ってみよう
実際に事業企画・計画を作ってみよう

前回「Web、アプリ事業企画・計画の作り方4 ー 購入率・客単価を計算しよう」まで、

事業計画シミュレーションを作る際の、基本的な計算式、

流入数 × 登録率 × 購入率 × 客単価 = 売上

の式内の各単価や率の計算方法、推定方法を説明してきました。
それでは、今までの計算式を利用して、Excelで事業シミュレーションを作成してみます。

作成するシミュレーションの前提となる事業の前提条件を次の通りとします。

事業シミュレーションの前提条件

事業の目的

無料登録後、購入すると月額課金となるサービス。
毎月サービスを提供(運用)することで、サブスクリプション(月額)にて、流入数の増加とともに、収益性を向上。

流入単価

電波、紙面、Webでそれぞれに流入単価を想定しています。
Webについての流入単価はアドセンスの等のツールを使用すれば推定は可能です。
電波、紙面については、実績の蓄積と分析が必要になります。
これまで実績がない場合は、広告代理店などに相談してみると良いと思います。

登録者率・登録者数

事前にマーケティングリサーチを行い、登録率について、定性、定量調査からある程度の推定値を算出していると仮定します。

購入率・購入者数

こちらも、事前にマーケティングリサーチを行い、購入率について、定性、定量調査からある程度の推定値を算出していると仮定します。

 

事業シミュレーションのスプレッドシート

実際に組んでみた事業シミュレーションは下記になります。
googleスプレッドシートで作成してあります。

事業シミュレーション

数値や率は、説明用のあくまで仮のものになります。
また、今回は説明を分かりやすくするため、シミュレーション自体をかなりシンプルにしてあります。
実際は、想定される率や単価を細かく入れて、各項目毎、毎月毎に変動させてシミュレーションの精度を上げていきます。
例えば、このシミュレーションでは、広告流入毎に登録率や購入率を変動させていません。
広告毎にこれらの率は変動が予想されるため、精度をあげるには、登録率、購入率を変動させます。

 

各シミュレーションを解説

流入率・流入数

流入率・流入数

毎月の投資金額と各流入単価は、コストのところで記載しています。
毎月の各流入数は、

広告投資金額 ÷ 流入単価 = 流入数

で計算しています。

販促費

例えば、Web系広告費の場合は、毎月

¥1,000,000 ÷ ¥100 = 10,000人

の流入となります。

 

登録率・登録者数

登録率・登録数

ここでは登録率を45%一律で計算しています。
登録率は色々な要件で変動することが多いと思います。
先にも記載しましたが、プロモーション対象のユーザーの性質、運営で行うキャンペーン等、月毎、日毎に細かく変動設定できるようにしても良いと思います。

登録数は、

流入数 × 登録率 = 登録者数

で計算しています。

例えば、1月の流入数は、21,667人のため

21,667人 × 45% = 11,464人

登録者数(累計)は、前月の登録者数(累計) × 離脱数をマイナスしています。
2月の累計登録者数は、

離脱数 11,464人 × 3% = 344人

をマイナスして累計しています。

(11,464人 - 344人) + 11,464人 = 22,584人

2月の累計登録者数は、22,585人となります

 

購入率・購入者数・売上

購入率・購入数・売上

無料登録後、購入で月額となるため、非購入者数の累計に対して購入率をかけて、購入者数を出しています。

非購入者数 = 前月の非購入者数 ー 前月の購入者数 + 今月の登録者数

2月の場合

21,209人 = 11,464人 - 1,720人 + 11,464人

月額サービスのため、毎月、購入者数が累計されていきます。
月額サービスの一番のメリットになります。
サービスの運用によって継続率を上げる(離脱率を下げる)必要がありますが、一度購入した人は購入を解除しない限り、毎月課金が発生します。
購入者数の累計に対して、客単価をかけることで、その月の売上が算出できます。

当月の購入者数(累計) = 前月の購入者数 ー 前月の購入者数 × 離脱率 + 今月の購入者数

当月の売上 = 当月の購入者数(累計) × 客単価

2月の場合

4,815人 = 1,720人 - 1,720人 × 5% + 3,181人

¥7,222,500 = 4,815人 × 1,500円

購入率に関しても、プロモーションを行うユーザー層や、キャンペーン等によって変動します。
このシミュレーションではわかりやすくするため、毎月定率にしていますが、変動値でシミュレーションできるようにしておくと更に精度が上がります。

 

製造原価・販促費・コスト

製造原価

販促費

このシミュレーションでは、製造原価と販促費の合計でコストを出しています。

コスト = 製造原価 + 販促費

開発費、運用費は仮のものになります。
実際は、自分の事業に合わせた形で入力します。

コスト

 

営業利益・営業利益率・累計損益

売上からコストを引いて、営業利益を、毎月の営業利益を累計して、累計損益を出しています。
このシミュレーションでは、単月黒字化が7ヶ月後、累損解消が11月になっています。
初期の開発費を減価償却しているので、キャッシュフローの面は別になります。

単月黒字化・累損解消

流入数、登録率、購入率、流入単価、等々の数値を変動させることで、個々のパフォーマンスがどの程度必要かを検証できます。

また、色々な条件で、黒字化のタイミングをシミュレーションすることができます。

例えば

客単価を低く抑える分、登録率、購入率が上がっていく場合は?

対象ユーザーを保持している他企業と提携して流入単価を下げ、協業企業にRYTを支払った場合は?

購入キャンペーンを一定期間行い、購入率と客単価を上げた場合は?

といったシミュレーションが可能です。
個々のパターンでどのタイミングで黒字化していくかをシミュレーションすることができます。

 

実際に事業を始めた場合

どんな事業シミュレーションを行っても、実際に事業を始めてみると、この通りに行くことはまずありません。
このシミュレーションは、

事業開始前は、検討・検証するための道具
事業開始後は、事業の目標値

として利用します。
実際に事業を始めてみると、どこがボトルネックになっているかわかりにくいことが多いです。
シミュレーションを元に、実際の事業の各単価、数値を把握して、どの数値や率の効率が悪いのか、しっかり把握して改善を行っていく必要があります。

例えば登録率が悪ければ、

登録ページの改善
登録キャンペーン実施
サービスの訴求ポイント見直し

等を行って登録率を改善します。
実際に検討実施した施策の結果はナレッジとして蓄積していきます。

以上になります。

このブログの記事は仕事の合間を縫って書いております。何度か見直したのですが、間違い等ありましたらご指摘いただけると助かります。
次回は、こういったシミュレーションについて把握した上で、実際に企画を行っていきたいと思います。